平成28年分の年末調整の改正点
「年末調整」は、給与の支払いを受ける人について、毎月の給料や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与等の総額についての年税額とを比べて、その過不足額を精算する手続きです。
給与所得者のほとんどは、確定申告の手続きをとることなく、この年末調整によってその年の所得税及び復興特別所得税の納税が完了します。
平成28年分の年末調整における主な改正点をみていきます。
(1)通勤手当の非課税限度額
平成28年1月1日以後に支払われるべき通勤手当の非課税限度額が、10万円から15万円に引き上げられました。
なかなか月10万円を超える通勤手当を支給している例は少ないかもしれませんが、軽井沢から東京まで新幹線通勤した場合などが該当します。
この改正は、平成28年4月に行われており、改正前に支払われた通勤手当については、本年の年末調整の際に精算する必要があります。
源泉徴収簿の年末調整欄を使用した具体的な手続きは、次の通りです。
① 改正前の非課税規定を適用した通勤手当のうち、改正後の非課税規定によって非課税となった金額を計算します。
② 源泉徴収簿の年末調整蘭の余白に、「非課税となる通勤手当」と表示して、①の計算根拠、非課税となった金額を記入します。
③ 源泉徴収簿の年末調整蘭の「給料・手当等①」欄に、給料等の総支給額から、新たに非課税となった金額を差し引いた後の金額を記入します。
④ その差引後の給料・手当等の総額を基に、年末調整を行います。
ここでは、源泉徴収簿に計算根拠を記載することとしていますが、正しく所得税・復興特別所得税の年税額が計算され、その計算根拠が何らかの方法で記録、保存されていれば、源泉徴収簿への計算根拠の記載は省略して差し支えありません。
(2)国外に居住する親族に係る扶養控除等の適用
平成28年1月1日以後に支払われる給与等の源泉徴収又は年末調整において、非居住者である親族(国外居住親族)に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除、配偶者特別控除などの適用を受ける場合には、「親族関係書類」及び「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出又は提示する必要があります。
① 親族関係書類
国外居住親族がその給与所得者の親族であることを証するものをいいます。
a 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類(出生証明書、婚姻証明書等)及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
b 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
② 送金関係書類
給与所得者がその年において、国外居住親族それぞれの生活費又は教育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
a 金融機関が発行した書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により、その給与所得者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
b いわゆるクレジットカード発行会社が発行した書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを利用して商品の購入や役務提供を受けたことに対する支払をしたことにより、その代金に相当する額をあその給与所得者から受領したことを明らかにする書類
扶養控除等申告書の「生計を一にする事実」欄に、給与所得者がその年において国外居住親族に送金等をした額の総額を記載することになります。
特に、「送金関係書類」は国外居住親族各人別に必要となり、現金で手渡しているなど書類がない場合には、扶養控除等を適用することはできませんので、注意が必要です。