杭打ち偽装事件解決金への課税
姉歯事件よりも深刻な杭打ち事件
昨2015年秋の横浜マンション建設杭打ちデータ偽装事件は、マンションが傾くという深刻な実害により発覚しました。
2005年の耐震強度構造計算書偽装事件(「姉歯事件」)は内部告発で発覚しましたが、東日本大震災でも実害報告はされていません。
類似の先行事例が税務訴訟に
杭打ちデータ偽装事件は、「あり得ないことが起きた」というような報道ぶりでしたが、昨年2月地裁判決のあった八王子税務署管内の事件は、マンション躯体の大規模瑕疵発覚で、「その団地の各建物の改築工事等がなされた」という類似のものでした。
マンション新築は平成元年、瑕疵発覚は平成12年1月、改築工事は平成17年4月から20年12月まで、改築完了後各区分所有者は、順次新建物に入居しています。
原告への補償の内容
この訴訟原告となった当事者についてみてみると、仮移転先に居住していたことに伴い支出した実費等について、交通費として162万5520円、トランクルーム保管料として123万655円、引越費用として75万7745円及びその他の移転雑費として20万円の合計381万3920円が支払われました。
なお、新建物の登記手続が必要になるとしたら、登録免許税のほか土地家屋調査士・司法書士の費用、さらに不動産取得税も支払われることになっていました。
譲渡移転の人に対しては
他方、各建物の瑕疵の補修工事が終了するまでの間、各建物の各区分所有者のうち所有する住宅の買取りを希望する者に対しては、その住宅を買い取り、その対価に加えて別途の解決金を支払う取扱いもしておりました。
原告当事者も、解決金として300万円を受け取りました。
解決金は課税の対象になるのか
この手の事件では、損害賠償金非課税で処理されそうに思われるのですが、この八王子の事件では、解決金300万円のみは一時所得課税の扱いとされました。
理由は、解決金は実費補填とは別に支払われているもので、支払側の意図は一件落着手打ち金であり、慰謝料としての損害賠償の趣旨を有するものとの表明がないから、ということでした。
特別に発生した費用の補填だけでは、生活の不便や精神的苦痛は補償されないと思われますが、控訴中の事件です。