「一時に」とは「一時に一括」かどうか
「一時に」とは
「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」という所得税法の規定にある「一時に受ける」について裁判で争ったものがあります。
一時とは、一度、一回、一括などの意味なのか、ということについてです。
税務署サイドの主張
退職所得とは、給与の一括後払いとして一元的に性格づけることができ、給与所得と退職所得の違いは、支給の態様とタイミングの相違にすぎないものであることに鑑みると、退職所得に該当するためには、その支払時期、支払方法(支給の態様)において、「退職により一時に受ける給与」と同視できるようなもの、すなわち、一時に一括で支払われるようなものでなければならないと解すべきであり、支払いを決めた最初の時点において、「一時」に一括で支払うことを予定しないで、まして、不確定な数年先での抽象的な支払予定に止めるなどは、実質的にみて一時金要件を満たさないことは明らかである、と税務署サイドは主張しました。
納税者サイドの主張
「退職により一時に受ける給与」との定義からも明らかなとおり、「一時に」支払われれば足り、「一時に一括で」支払われるべきことを法律は要求しておらず、退職年金のような定期的、継続的な支給でないことが明確であれば、それでよいわけで、世の実例としても、退職慰労金が分割支給されることは少なくなく、所得税の通達や、国税庁のホームページに公表されている質疑応答事例においても、退職金等が分割支給され得ることを前提としている、と納税者サイドは主張しました。
裁判所の示した判決
退職を基因として支払われる金員が、年金として定期的、継続的に支給されるものでなければ、「一時に受ける」ものに該当するのであり、複数回にわたって分割支給されたからといって、そのことのみをもって、当該金員が一時金要件を満たさないということができないことは明らかで、所得税通達が退職手当等の分割払等をする場合の源泉徴収税額の計算等について定めており、また、国税庁が、その通達の内容をホームページにおいても公表している、と裁判所も納税者と同じ見解を示しました。