国外転出時課税と納税管理人の届出
平成27年7月「国外転出時課税」スタート
平成27年7月1日から「国外転出時課税」制度がスタートしました。
正式な名称は「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」といいいます。
1億円以上の有価証券等を有する居住者が国外転出(日本国内に住所・居所を有しないこと)をした場合には、その有価証券等の譲渡をしたものとみなし、出国時に有価証券等の「含み益」に課税する制度です。
富裕層の軽課税国移住による租税回避には、各国の税務当局も頭を悩ましており、今回の改正もOECDの公表した「BEPSプロジェクト」(税源浸食と利益移転)に日本側が対応したものでした。
この「国外転出課税」の留意すべき事項はいくつもありますが、中でも「納税管理人の届出」を国外転出時までに行っているか否かにより、譲渡があったものとみなされる金額が異なってくる点は、その申告期限とあわせて注意したいところになります。
国外転出までに納税管理人届出ありの場合
居住者が国外転出の時までに、所轄税務署長に「納税管理人の届出」を行っている場合には、「国外転出時の価額」で有価証券の譲渡等があったものとみなして、翌年の確定申告期限(3月15日)までに申告と納付を行うことになります。
また、国外転出までに「納税管理人の届出書」を提出していれば、「納税猶予」の適用があります。
この場合、確定申告書の提出期限までに担保を提供するとともに、その納税猶予期間中に「継続適用届出書」を所轄税務署長に提出することになります。
国外転出までに納税管理人届出なしの場合
国外転出の時までに「納税管理人の届出書」を提出しない場合には、原則として「国外転出予定日から起算して3ヶ月前の価額」で有価証券等を譲渡したものとして国外転出時に申告することになります。
この場合には、「納税猶予制度」の適用を受けることはできないので、国外転出までに納付を行わなければなりません。
なお、国外転出後に「納税管理人の届出」をし、申告するときは、「国外転出時の価額」で有価証券の含み益を計算することとなります。
(この場合においても、原則として「納税猶予」の適用はありません)