簿価修正の隠れ規定
損金不算入寄附金は株式簿価修正
設立されたばかりの子会社の場合、利益剰余金はありませんから、利益の配当はできません。
しかし設立により会社に出資された現預金があります。
その現預金を寄附金として親会社に引き渡すことは可能です。
そしてグループ法人税制では、法人による完全支配関係にある会社間で寄附・贈与が行われた場合、贈与法人・受贈法人いずれにおいても損金不算入・益金不算入です。
そこで、保有現預金を親会社に全部寄附した後に子会社を1円で売却したら、売却損を計上することになるでしょうか。
このような不自然な事態を排除するために、「子会社株式簿価修正」という制度が設けられています。
子会社が親会社に1000万円寄附したら、親会社の子会社株式の簿価は1000万円減額することになります。
資本の配当の場合はどうなるか
設立されたばかりの子会社が直ちに配当することは必ずしも不可能ではありません。
新設分割子会社の法定資本金を1円にしたが、資本剰余金が1000万円だった、という場合、資本剰余金を原資とする配当が可能だからです。
この1000万円を親会社に配当で戻してしまったら、純資産が1円の会社になってしまいます。
ここで、子会社を1円で売却したら、売却損を計上することになるのでしょうか。
しかし、そういうことにはなりません。
資本の配当は譲渡とみなされる
設立されたばかりで利益剰余金のない会社での資本剰余金の配当は、その分配の割合相当の株式の発行会社への譲渡があったことになり、その割合だけ、株式の譲渡原価が認識されるので、税務上の株式簿価は減算されることになります。
先の例での、1円を残しての1000万円の資本剰余金の配当では、1000万円の譲渡収入と1000万円の株式簿価の原価算入ということになり、子会社株式簿価残価は1円となるので、1円で売却しても売却損は発生しません。
資本の配当と「子会社株式簿価修正」
「子会社株式簿価修正」という税務手法は、グループ法人税制で初めて出現したかのように見えますが、資本剰余金の配当の場面では以前から、株式簿価を減額する規定になっていますので、益金不算入に対応する損金不算入の寄附金が同じく簿価修正をすべきことになるのは趣旨が同じなのでこれを踏襲したからと言えます。