変動所得・臨時所得の平均課税
2月16日から、所得税の確定申告の受付が始まりました。
所得税法では、所得をその性格に応じて、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分類し、それぞれの所得について個別に所得の金額を計算する仕組みをとっています。
所得税の税率は、所得が多いほど高い税率が課せられる累進課税となっており、分離課税に対するものなどを除くと、5%から40%の6段階に区分されています。
年単位での課税になりますから、前年に比べて、急に所得が増えた場合には、その分、所得税も多く納付しなければならず、毎年所得が平準化されている方に比べて、税負担が重くなる場合があります。
そこで、作家、漫画家、作曲家、漁師など、その年その年によって収入の変動が激しい職種を対象として、一定の所得は「変動所得・臨時所得の平均課税」の適用が受けられます。
(1) 変動所得
変動所得とは、その金額が年によって著しく変動しがちである所得をいい、事業所得や雑所得のうち、漁獲やのりの採取による所得、はまちやまだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得、印税や原稿料、作曲料などによる所得をいいます。
漁獲による所得とは、普通にいう漁業の所得よりもその範囲が少しせまく、魚類や貝類などの水産動物を補獲してそのまま販売したり、簡単な加工をして販売する場合の所得です。
したがって、水産動物でないもの、例えば、こんぶ、わかめなどの水産植物の採取による所得や、水産動物であっても、例えば、えび、こい、ますなどの養殖による所得は含まれません。
(2) 臨時所得
臨時所得とは、事業所得や不動産所得、雑所得のうち、次の所得やこれらに類する所得をいいます。
① 土地や家屋などの不動産、借地権や耕作権など不動産の上に存する権利、船舶、航空機、採石権、鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権などを3年以上の期間他人に使用させることにより、一時に受ける権利金や頭金などで、その金額がその契約による使用料の2年分以上であるものの所得
② 公共事業の施行などに伴い事業を休業や転業、廃業することにより、3年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得
③ 鉱害その他の災害により事業などに使用している資産について損害を受けたことにより、3年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得
④ 職業野球の選手などが、3年以上の期間特定の者と専属契約を結ぶことにより、一時に受ける契約金で、その金額がその契約による報酬の2年分以上であるものの所得
(3) 平均課税適用の条件
① 前々年、前年に変動所得がなかった方や、前々年、前年に変動所得があってもその合計額の2分の1の金額が本年の変動所得の金額に満たない方については、本年の変動所得の金額と本年の臨時所得の金額との合計額が本年の総所得金額(申告書第一表の「所得金額」欄の合計)の20%以上であること
② 前々年、前年に変動所得があって、その合計額の2分の1の金額が本年の変動所得の金額以上の方については、本年の臨時所得の金額が本年の総所得金額の20%以上であること
(4) 平均課税の計算
平均課税では、変動所得の部分を5年間で受け取った金額と見なして計算されます。
変動所得の金額を5で割って、その5分の1の金額に通常の税率を適用し、さらにその金額を5倍して納税額を計算することになります。
「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」がありますので、計算書に沿って計算していきます。
この平均課税の適用を受けるには、所得税の確定申告書に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」を添付する必要があります。
対象となる方は限られていますが、突然、大きな利益を手にしたときに備えて、こういう制度もあると覚えておいてはいかがでしょうか。