事前確定届出制度の行政裁判での副産物
事前確定届出制度とは
平成18年の税制改正により設立された制度です。
役員の報酬は定期同額を原則とするが、所定の手続きを踏んで、事前に届け出れば、臨時の役員報酬すなわち役員賞与も損金算入を認めるという法律です。
ただし届け出通り支払われない場合は、全て損金不算入となります。
届出の不備により否認された事例
平成24年10月9日に東京地裁で争われた行政訴訟に判決が出ました。
9月決算の企業が11月の株主総会並びに役員会で、役員の定期報酬を定め、更に臨時報酬は12月と6月に各700万円を支払う旨を決め、税務署に事前確定届出書を提出しました。
12月の役員賞与は届け出通り支払われましたが、6月の役員賞与は業績悪化のため、従業員の賞与をカットした手前もあり、役員会で減額の決定をし、半分の350万円を支払うこととしました。
その際救済措置である、事前確定届出給与に関する変更届出を提出しませんでした。
納税者は、6月支給分は損金としませんでしたが、税務署は事前確定届出通り支給されていないため、12月分の賞与700万円も損金不算入として、更正決定を行い争われておりましたが、この度の判決では納税者が敗訴となりました。
納税者側の手続きの不備もあり、「役員への臨時報酬は、役員の任期を通して届出通りとする」税務署の主張が認められました。
副産物としての短期前払費用
この争いで、役員の任期は、株主総会から次の株主総会までであり、役員への報酬は、この1年間に対応するものであるから、役員への臨時報酬は、一部翌期の前払費用でとしての性格を有するが、短期前払費用の損金算入の範疇として、事前確定届出をしていれば認めていると税務当局が主張した点です。
従来短期前払費用の損金算入は、弁護士や税理士への顧問料等人的役務の提供を伴うものを認めていませんでしたが、役員への臨時報酬を短期前払費用として損金算入を認めましたので、今後の対応が注目されます。