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民事訴訟と和解   

民事訴訟は、裁判所に対して権利義務に関する私的紛争の判断を仰ぐ手続です。

当然、勝訴判決をもらうことを目的として当事者(または訴訟代理人)は訴訟活動をします。

しかし、民事訴訟では、訴訟上の和解で解決が図られることも少なくありません。

統計上は地方裁判所に係属した第一審事件の約3分の1が訴訟上の和解で終結しています。

訴訟上、裁判官の面前で和解が成立すると、和解条項が記載された和解調書は確定判決と同じ効力を有します(民事訴訟法267条)。

確定判決と同じ効力を有するという事は、強制執行をする際の債務名義となることを意味します(民事執行法22条)。

債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことです。

金銭支払いを命じる勝訴判決を得たとしても、相手方が一括支払をすることが困難であるような場合には、任意の履行は期待できません。

判決は権利の存在を認めるだけで、判決のみにより権利の実現を図ることはできません。

また、確定判決に基づいて強制執行をしても、手間と費用が掛かり、相手方が債権を満足させるだけの財産を所有していない場合には権利の実現は困難です。

訴訟上の和解では、判決のように「YはXに対し○○○万円を支払え」のような硬直的な文言ではなく、相手方の資力を考慮して支払期日や分割払い等の和解条項を柔軟に定めることができます。

互いに信頼の上で実現可能な内容を和解条項とする建前であることから任意の履行が期待できます。

もちろん、訴訟上の和解は互いに譲歩をしなければなりませんので、全面勝訴をした場合よりは経済的利益は少なくなるのが通常です。

何十件と事件を抱えている裁判官の立場からは、判決を書くことは相当な労力が要りますので、そのことが和解を勧める動機となっているようです。

和解を試みるタイミングは、人証調べ(尋問)の前後が多いと思います。

争点整理がなされて、事件に対する裁判官の心証がある程度形成された段階で和解の試みがなされることが多いです。

和解に応じるか否かは、判決の見込みや和解に応じるメリット・デメリットを考慮して慎重に判断しなければなりません。

もちろん、白黒ハッキリつけたい場合には和解に応じず判決を下してもらうことも自由です。