内容証明が不達の場合
内容証明を送ったけれども相手方に届かなかった場合について解説します。
民法上、隔地者に対する意思表示は相手方にその通知が「到達」した時から効力を生じます(民法97条、到達主義)。
そこで、相手方に届かなかった場合に、意思表示の通知が「到達」したと言えるかが問題となります。
相手方に届かない理由としては、①転居先不明、②受取拒否、③不在通知後保管期限切れ、の3つの場合があります。
①転居先不明の場合
相手方が引越をしてしまっていて郵便局に転送依頼をしていない場合には「転居先不明」として戻って来てしまいます。
この場合には、もちろん内容証明に記載した意思表示の通知が「到達」したとは言えません。
よって、転居先を調べて再度送付しなければなりません。
転居先は住民票の移動により調べることができますが、住民票の写しは①本人、②本人と同一世帯の者、③本人の委任を受けた代理人以外は入手することができません。
弁護士は職務上請求として住民票の写しの交付請求をすることができますが、依頼を受けた事件に関連しなければ交付請求をすることはできません。
訴訟代理や交渉代理の事件を受任していることが前提となりますので、単に住民票の写しを入手するだけを弁護士に依頼することはできません。
②受取拒否の場合
相手方が内容を確認せずに受取拒否をした場合は、内容証明に記載された意思表示は相手方に「到達」されたと取り扱われます。
意思表示の通知が、相手方が了知し得る状態に置かれれば「到達」したと認められるからです。
よって、自己に都合の悪い内容証明だけを受取拒否しても意思表示の効果は生じますので、受取拒否は意味がありません。
③不在通知後保管期限切れの場合
配達に赴いたが不在だった場合に不在通知が相手方の郵便受けに投函されますが、郵便局の保管期限内(7日間)に相手方が取りに来なかった場合、内容証明は差出人に戻って来てしまいます。
この場合には、受取拒否の場合と異なり「到達」の効果は生じません。
相手方が了知し得る状態に置かれたとは評価されないからです。
この点について、保管期限満了時点で意思表示は「到達」したと判断した判例(最高裁平成10年6月11日判決)がありますが、差出人等の表示から相手方が意思表示の内容を推測することが出来て、受け取ることも容易である場合についての事例判断なので、全ての保管期限切れの場合に「到達」することを認めたとは評価されていません。
訴訟等で相手方に意思表示が「到達」したことを証明しなければならない場合には、再度送付してみるか、相手方の郵便受けに届いたことを証明できる特定記録郵便を利用するか、直接手渡しに行くか等を検討しなければなりません。