振込手数料と持参債務
口座振込で商品代金等を支払う際に振込手数料を差引いて支払っていませんか?
業界によっては商慣習として半ば当然のように振込手数料を差引いて代金等を支払っていると思います。
しかし、振込手数料を相手方負担とする合意があれば別ですが、合意が無ければ法律上は債務を全額弁済したことになりません。
民法484条は「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。」と定めています。
別段の意思表示がない限り、特定物の引渡しを除いては、債権者の住所にて弁済をしなければならない、いわゆる「持参債務の原則」を定めています。
商品代金やサービスの対価を口座振込みにより決済する場合にも、持参債務の原則は適用され、債権者の口座に入金されて初めて弁済がされたことになります。
また、民法485条は「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。」と定めています。
振込手数料も「弁済の費用」に該当することから、債務者負担が原則です。
馴染みの取引先との合意の上で振込手数料を債権者負担とすることは問題ありませんが、合意が無い限り、振込手数料は債務者負担が原則であることは知っておいてください。
債権者に何の断りもなく振込手数料を差引いて支払っても債務を全額弁済したことにはならないので注意が必要です。