離婚について(その3)
既に婚姻関係が破綻している夫婦において、破綻に至った原因を作った夫婦の一方(有責配偶者)からの離婚請求は認められるでしょうか。
例えば、愛人の元で暮らしている夫から妻に対して離婚請求をする場合にこの問題が顕在化します。
そんなムシのいい話しは無い、と思うのが素直な感覚だと思います。
最高裁も長い間、有責配偶者からの離婚請求は信義則に反するとして認めていませんでした。
ところが、最高裁大法廷昭和62年9月2日判決は、原則として有責配偶者からの離婚請求は信義則に反して認められないとしながらも、例外的に、
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
②夫婦間に未成熟子(経済的に自立していない子供)がいないこと
③相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のないこと
の3要件を満たす場合には、有責配偶者からの離婚請求を認める判断をしました。
本判決の事案は、夫が不貞行為の相手方と暮らすために家を出て、その別居期間が35年に及んでいる夫(74歳)から妻(70歳)に対して離婚を請求したという事案でした。
有責配偶者からの離婚請求が認められる場合の別居期間は、その後、徐々に短くなってきており、東京高裁平成14年6月26日判決は別居期間約6年で認めています。
ただし、前記最高裁昭和62年判決が示すとおり、別居期間だけでなく、年齢や同居期間や有責配偶者からの経済的給付などを総合的に考慮した結果の判断ですので、単純に別居期間が6年あれば有責配偶者からの離婚請求が認められるという訳ではありません。