弁護士と税理士
弁護士法第3条第2項の当然規定
弁護士法3条2項には、「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる」との規定があります。
この規定は、昭和24年の弁護士法抜本改正に際し、挿入されたもので、当時は「税務代理士」との表現でした。
戦前からある税務代理士法を廃止し、昭和26年に税理士法が立法されるに際して、「税務代理士」は「税理士」に書き換えられました。
税理士法第51・52条の業務制限規定
税理士法52条は、税理士でない者は税理士業務を行つてはならない、との規定を置き、51条で、弁護士については、所属弁護士会を経て国税局長に税理士業務を行うこと通知すれば、税理士業務を行うことができる、との規定を置いています。
弁護士法の当然規定と税理士法の業務制限規定とは、明らかに矛盾しています。
不通知弁護士への立会い拒絶事件
特に税務を意識していない通常の法律事案で、たまたま相手が税務当局だったというような場合は、さらにこの矛盾は鋭い業際関係になります。
滞納相続税の連帯納付義務の処理に関する納税者と大阪国税局との係争ではない交渉において、税理士法51条に基づく「税理士業務開始通知書」と30条に基づく「税務代理権限証書」の提出をしていないことを理由に、弁護士の同席を拒絶した、という事件が起き、訴訟になっていました。
地裁勝利・高裁敗訴・最高裁不受理確定
地裁では、弁護士は、弁護士の固有の権限として、受任した法律事務に付随するものである限りでは51条通知をしなかったとしても税理士の事務を行うことができる、としました。
高裁では、税理士法は、現行弁護士法制定(大改正)の2年後に、弁護士法3条2項の規定が存在することを前提に制定されたものであるから、税理士法51条、52条の規定が弁護士法3条2項の特別規定という関係に立っていると考えるのが妥当である、として弁護士を逆転敗訴にしました。
弁護士法と税理士法との適用関係
すでにある法律規定が存在することを前提に、別な法律で矛盾する規定を置くことになるときは、先に存在する規定を修正する立法趣旨があると解されます。
これを後法優先の原則と言います。
これを確認したような判決でした。