退職時に余った有給買取りの税務処理
会社が従業員の有給休暇を買い取ることは、労働基準法39条に反する違法行為ですので、原則として禁止されています。
しかし、次のような場合は、例外として有給休暇を買取りが認められています。
1.法定日数を超えて与えている有給休暇がある場合
会社独自の有給休暇日数を定めている場合について、法律で定められた年次有給休暇の日数と比較して超過している部分があれば、その部分を買い上げることができます。
2.時効により消滅した年次有給休暇がある場合
年次有給休暇は、休日とは別に労働者にまとまった休暇を有給で与えることで、心身の疲労回復と労働力の維持を図る制度です。
しかし、有給休暇を請求する権利は2年で時効になってしまいますので、権利がないから使うことができないという問題がおこります。
そのため、時効によって消滅した部分の有給休暇であれば、買い上げることができます。
3.従業員の退職時に余った有給休暇がある場合
退職間近になって、従業員に未消化の有給休暇が残っている場合には、会社は任意で買い上げることができます。
あくまでも、会社側にとっては任意措置です。
従業員に買取請求権があるわけではありませんので、従業員が会社に有給休暇の買い取りを請求しても、会社が応じるとは限りません。
原則禁止されている有給休暇の買取りですが、上記の例外として買い取られた場合、税務処理として、支給する給与が、給与となるのか退職手当等として処理するのか、その判断が問題です。
所得税法30条では、退職所得について、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」とあります。
また、所得税法基本通達30‐1でも、「退職所得等は、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われる給与をいう」とあります。
これらを踏まえ、税務当局では、「退職する従業員にのみ認められる制度で、退職によって支払いが発生するものであり、かつ、従業員へ退職金と一緒に一時に支払うのであれば、退職手当等となるだろう」としています。