資本的支出と修繕費の区分
固定資産の使用期間中は、その資産を維持するために、修繕、補修、保全などの支出が避けられませんし、故障や破損などの思わぬアクシデントに対応する必要もあります。
また、効率の改善や使用環境の見直し、変更のための支出が行われることも多いと思います。
これらの支出は、会計上、「資本的支出」と「修繕費」に区別しなければなりません。
「資本的支出」とは、その資産の価値を高めたり、耐用年数を延長させたりする効果がある支出です。
支出時には、資産計上をして、減価償却によって、徐々に費用化されていきます。
「修繕費」に計上出来るものは、資産の維持活動にかかるものとして、当期の費用として処理されるものです。
「資本的支出」か「修繕費」のいずれであるかは、その支出により固定資産の価値が増加しまたは耐用年数が延長するか、あるいは、そのような事実はなく単なる維持修繕にとどまるかで判断します。
・資本的支出とされるもの
税務上の扱いでは、資本的支出とは、修理、改良などその名義のいかんを問わず、固定資産について支出する金額のうち次の金額をいいます。
①使用可能期間(耐用年数)延長と認められる場合
支出金額 ×(支出後の使用可能年数-支出前に予測された使用可能年数)÷ 支出後の使用可能年数
②価額が増加すると認められる場合
支出した直後の価額(時価)- 通常の維持管理をしている場合に予測される支出直前の価額(時価)
いずれにも該当するときは、いずれか多い金額となります。
・資本的支出と修繕費の判定
しかし、実務ではこの規定のみで具体的な処理を判断することは難しい面がありますので、法人税法では、基本通達7-8において具体的な取扱いの基準を設けています。
基本通達では、まず、7-8-1で資本的支出、7-8-2で修繕費の例示をしています。
続いて、7-8-3において少額又は周期の短いものについては重要性が乏しいものとして修繕費として扱うものと定めています。
さらに区分が明らかでない場合には、7-8-4の形式基準(60万円未満、10%基準)、7-8-5の特例による区分が認められています。
それでも、判定出来ない場合は、最終的には個別・実質判定をすることになります。
区分判定のためのフローチャートもありますので、参考にしてみてください。
資本的支出と修繕費の区分は、判断に迷うケースが多いにあると思います。
企業の損益、納税額に大きく関わってきますので、支出の範囲、実質的な内容の記録、資産と支出の関連性、判定基準などの根拠を示せるようにしておきましょう。
法人税基本通達
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm