時効中断
前回「消滅時効の期間」についてご説明しましたが、今回は「時効の中断」についてご説明します。
時効の中断とは、時効期間の経過をリセットさせることです。
例えば、消滅時効期間が10年である個人間の金銭消費貸借の貸金債権の場合に、10年が経過する前に時効中断の事由が認められると、その中断事由が終了した時から新たに10年の消滅時効期間が開始します。
時効中断事由は法定されています。
主な中断事由は①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認です(民法147条)。
一般にも身近な①と③について以下ご説明します。
①請求
権利者が、時効の利益を享受しうる者に対して、その権利を主張することをいいます。
例えば、貸金債権の債権者が債務者に対して貸金債権を有することを主張したり、土地の所有権者が不法占拠者に対して自己が所有権者であることを主張したりすることです。
③承認
時効の利益を享受しうる者が、権利者に対して、権利の不存在(取得時効の場合)又は権利の存在(消滅時効の場合)を表示することをいいます。
例えば、土地の不法占拠者が当該土地に所有権者に対して自己に所有権がないことを認めた場合や、金銭消費貸借の借主が貸主に対して一部の返済をしたり、利息を支払ったり、支払期限の延長を依頼したような場合は「承認」に該当します。
ただし、債権者が債務者に対して履行を請求することを特に「催告」といいますが、催告の場合には催告をしてから6ヶ月以内に裁判上の請求その他の司法手続きをしなければ、時効中断の効力は生じません(民法153条)。
例えば、貸金債権の債権者が債務者に対して請求書や督促状を送付しただけでは時効中断の効果は暫定的に生じるに過ぎず、中断の効果は確定させるためには、通知が債務者に到達してから6ヶ月以内に裁判所に訴えを提起する等をしなければなりません。
時効期間の経過を阻止するために適切に時効期間を管理する行為のことを専門用語で「時効管理」といいます。
皆様が保有する未回収の古い債権について、消滅時効が完成していないチェックして、時効中断が必要か否か時効管理を行うとよいでしょう。