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事業所得と給与所得の区別   

所得税では所得が10種類に分類されています。

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得及び雑所得です。

今回は所得分類の中で、個人事業をされている人にはお馴染みの事業所得と、会社に雇用されている人にはお馴染みの給与所得の区別について解説します。

両者ともに「役務提供の対価」である点では共通しますが、事業所得には必要経費の実額控除が認められるのに対して(所得税法27条2項)、給与所得には概算控除(給与所得控除)しか認められず(同法28条2項)、また、事業所得は自ら確定申告をしなければならないのに対して、給与所得は原則として給与支払者による源泉徴収で終了するという違いがあるため、両者の区別は納税者の利害に直接的に影響します。


条文上は

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く)をいう(同法27条1項)。

給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう(同法28条1項)。

と定められています。

上記の条文の定めから所得の性質は分かるものの、具体的な区別の基準は明示されていません。

そこで、弁護士が顧問先企業から収入する毎月一定額の顧問料が事業所得か給与所得か争われた事件において、最高裁は両者の区別について以下のような判断基準を示しました(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決)。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。

給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。

なお、給与所得については、とりわけ、給与支払者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。

と示しました。

事業所得は、「自己の計算と危険」、すなわち、対価をもらうだけでなく原価や経費を支出したり、仕事が無ければ収入はゼロというような関係にあることが本質的特徴であるのに対し、給与所得は対価の支払者との間に「指揮命令関係」があり、空間的時間的拘束を受けているということが本質的特徴であるといえます。

両者の本質的特徴を基準に、具体的事例に応じて、当該収入が事業所得に該当するか給与所得に該当するかを判断する必要があります。

ちなみに、上記最高裁で争われた弁護士の顧問料については、事業所得であると認定されました。

理由は以下のとおりです。

「上告人は、本件係争年度当時、事務所を設けて弁護士業務を営み、依頼事件を処理するほか、一般の依頼者と同様の立場にある顧問会社数社と顧問契約を結び、特定の会社のために常時専従する等格別の支配、拘束を受けることなく、会社から相談を受ける都度、自己の事務所において多くは電話で法律上の助言という労務の提供をしており、その回数も、会社が特別の問題をかかえている場合は別であるが、普通は月に1回ぐらいで、会社によっては2年に1回というところもあるというのであるから、本件顧問契約に基づき上告人が行う業務の態様は、上告人が自己の計算と危険において独立して継続的に営む弁護士業務の一態様にすぎないというものというべきであり、前記の判断基準に照らせば右業務に基づいて生じた本件顧問料収入は所得税法上、給与所得ではなく、事業所得にあたると認めるのが相当である。」