所得概念と違法所得
所得税は「所得」について課されます(所得税法7条1項各号)。
では、そもそも「所得」とは何でしょうか。
日本の所得税法は「包括的所得概念」という考え方で「所得」を捉えます。
包括的所得概念とは、「人の税金を負担する力(担税力)を増加させる経済的利得はすべて所得を構成する」という考え方で、これによると反復継続的な利得のみでなく、一時的・偶発的・恩恵的利得も所得に含まれることになります。
このように所得概念を考える理由は、すべての経済的利得を所得と捉えることにより
①公平に税を負担させることができること
②所得の再分配機能が高まること
③景気調整機能を増大させることができること
が、挙げられます。
では、私法上無効であるような違法な所得はどのように扱われるでしょうか。
この点について所得税法の明文規定は存在しないのですが、包括的所得概念の考え方からすると、違法所得であっても「所得」を構成すると考えられています(最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決同旨)。
違法所得を「所得」と捉えて課税することに対しては、国家が犯罪利得を是認することは不適切であるとの批判がありますが、まじめにコツコツ働いて得た収入にはわずかな額でも課税し、莫大な犯罪利得には課税しないというのでは公平な所得税制とはいえないとする価値判断が優先されているように思います。
参考までに日本の所得税制では採用されていない所得概念を紹介します。
消費型(支出型)所得概念
各人の収入のうち、効用ないし満足の源泉である財貨や人的労務の購入に充てられる部分のみを所得と観念し、蓄積に向けられる部分を所得の概念から除外する考え方をいいます。
この所得概念を採用している国は現在のところ無いようです。
制限的所得概念
経済的利得のうち、利子・配当・地代・利潤・給与等、反復継続的に生ずる利得のみを所得として観念し、一時的・偶発的・恩恵的利得を所得の範囲から除外する考え方をいいます。
イギリスを始めヨーロッパ諸国で支持されている所得概念です。
イギリス・ドイツ・フランス等は制限的所得概念に基づき株式譲渡益の非課税枠がとても大きいです。