租税法の基本原則(租税法律主義)
租税法の基本原則(租税法律主義)
租税法の基本原則とは、憲法に規定する原則であり、大きく分けて租税法律主義と租税公平主義の2つの原則があります。
今回は租税法律主義について解説します。
憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定しています。
この条文から「法律の根拠に基づかずに、租税を賦課、徴収することはできない」という基本原則である租税法律主義が導かれます。
場当たり的に課税要件が変更されたり、税務署の判断で新たに税金を創設されたりすると、国民が経済活動をするにあたり混乱が生じます。
そこで、国会があらかじめ制定する法律により課税することで法的安定性と予測可能性を国民に与えることができるようになります。
租税法律主義は解釈上その内容として、
(1)課税要件法定主義
(2)課税要件明確主義
(3)合法性の原則
(4)手続的保証原則
(5)遡及立法禁止の原則
などを含みます。
以下、各原則について見てみます。
(1)課税要件法定主義
課税要件法定主義とは、納税義務が成立するためには、法律でそのための課税要件(納税義務者、課税物件、課税物件の帰属、課税標準、税率)を規定していなければならず、また、租税の賦課及び徴収の手続は法律によって直接的に規定されていなければならないとする原則をいいます。
問題になるのは、例えば「財務省令で定める方法により」などと法律が下位規範である政令や省令に定めを委任する場合です。
委任それ自体は租税法律主義に反しませんが、委任する場合には一般的・白紙的委任は許されず、具体的・個別的委任でなければなりません。
また、委任の目的、内容及び程度が委任する法律の中で明確にされていなければならないと解されています。
(2)課税要件明確主義
課税要件明確主義とは、課税要件を法律で規定する場合でも、その内容が一義的でなければならないとする原則をいいます。
これは課税庁による自由裁量を排除するために求められる原則です。
(3)合法性の原則
合法性の原則とは、課税要件が充足されている限り、課税庁は租税を減免し、又は租税徴収を免除することは許されず、法律に定めるところにより税額を賦課徴収しなければならないとする原則をいいます。
これは課税庁による恣意的な徴税を排除するために求められる原則です。
(4)手続的保証原則
手続的保証原則とは、租税の賦課・徴収は公権力の行使であるから、それは適正な手続で行われなければならず、またそれに対する争訟は公正な手続で解決しなければならないとする原則をいいます。
更正処分の理由附記の制度(国税通則法74条の14第1項)などはこの原則に由来します。
(5)遡及立法禁止の原則
遡及立法禁止の原則とは、新法(改正法)を公布日よりも前に施行し、または適用することにより納税者に不利益を与えることを認めないとする原則をいいます。
問題になるのは、所得税や法人税のように期間計算が必要な期間税についての遡及立法です。
年度の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の始めに遡って適用されることが許されるかどうかは、そのような改正がなされることが年度開始前に一般的かつ十分に予測できたかどうかにより判断すべきと解されています。
次回は租税法のもう一つの基本原則である「租税公平主義」について見てみたいと思います。