租税の意義・特色・機能
国(地方公共団体)と国民(住民)との関係の考察は個別法規の総称である「行政法」という学問領域がありますが、特に租税に関してはその特殊性から「租税法」という学問領域により考察されます。
近年は司法試験の選択科目として法科大学院で租税法を学ぶ人も多くなってきました。
そこで今回からは、租税法について簡単に実務との関係について触れながら解説をしたいと思います。
なお、定義などは東京大学名誉教授金子宏先生の著書「租税法」から多くを引用しています。
税金の法律的な側面について理解が深まって頂ければ幸いです。
1 租税の意義
租税とは、国家(地方公共団体)が特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律(条例)の定めに基づいて私人に課する金銭給付のことをいいます。
2 租税の特色
上記の意義から明らかになる租税の特色は、
①公益性(目的は公共サービスの提供)
②権力性(一方的・権力的課徴金の性質)
③非対価性(各種手数料、使用料、特許料などと区別)
が挙げられます。
3 租税の機能
公共サービスの提供のための資金調達が租税ですが、それだけにとどまらず、以下の機能があります。
(1)富の再分配
憲法に規定する生存権(25条)を保障するための社会保障政策の一種として富の再分配が必要であり、その方法の一つとして租税が機能しています。
すなわち、富裕層からより多くの租税を徴収し、それを各種社会保障給付に充てることにより富の再分配が図られるのです。
租税による富の再分配のメリットは、市場経済への干渉の度合いが少ないことと、社会のすべての構成員に再分配の効果が及ぶことです。
(2)景気調整
景気の後退期には、税負担の軽減することにより民間の可処分所得の増加を図り、もって投資と消費を刺激することが期待でき、景気の過熱期には、税負担を増加することにより民間の可処分所得の減少を図り、もって投資と消費を抑制することが期待できます。
以上、租税(=税金を課されるという法律関係)は私人間の取引とは異なる特殊な関係だということ、租税には様々な機能があることがご理解頂けたと思います。
次回は「租税法の基本原則」について見てみたいと思います。