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離婚に伴う財産分与の税務   

離婚に伴う財産分与(民法768条、771条)とは、夫婦が婚姻中に共同で築いた夫婦共有財産について離婚を契機に清算して分配することです。

夫婦共有財産であるか否かは形式的(名義)にではなく実質的に判断されます。

分与の割合は財産形成に対する寄与度によりますが、通常はほとんどのケースで5:5が基準になります。

以前は専業主婦の妻の分与割合は3割程度と判断されることもあったのですが、最近は内助の功の価値が重視されるようになり5割と判断されることが多くなってきました。

財産分与は

①夫婦共同生活中の共通の財産の清算(清算的財産分与)

②離婚後の相手方の扶養(扶養的財産分与)

③離婚による精神的損害の賠償(慰謝料的財産分与)

の3つの性質を併せ持つと解されています。

所得税法では、「資産の譲渡」に対して所得税(譲渡所得)が課されることが規定されています(所得税法33条)。

そこで、不動産などの資産を財産分与した場合に、所得税は課されるでしょうか?

答えはYESです。

財産分与をして対価を得るわけではないのに「資産の譲渡」に該当するのかという疑問はあると思います。

この点について最高裁は「譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものであるから、その課税所得たる譲渡所得の発生には、必ずしも当該資産の譲渡が有償である必要であることを要しない。

したがって、所得税法33条1項にいう『資産の譲渡』とは、有償無償を問わず資産を移転させるいっさいの行為をいうものと解すべきである」と述べています(最高裁昭和50年5月27日判決)。

つまり、現実に経済的利益を得たかどうかを問わず、資産が移転して発生した観念的な資産の評価益(キャピタルゲイン)が課税の対象になるということです。

また、そもそも夫婦「共有」財産であるならば、財産分与の3つの性質のうち①清算的財産分与の部分はもともと潜在的な持分がある財産を分けただけであって「資産の譲渡」に該当しないのではという疑問があると思います。

この点について最高裁は

「夫名義の資産形成に対する妻の貢献度が顕在化するまでの間、妻が夫名義の財産に対しなんらかの潜在的な持分を有するとしても、それは未だ持分割合も定まっていない抽象的な権利というべきものであり(右資産形成の態様には種々様々なものがありうるし、夫婦の財産は通常複数のものから成るものであるから、それらのすべてについて一律に妻が二分の一の共有持分を有するとみることはできない。)、現実の財産分与手続がされて初めて具体的な権利として確定するものである。

したがって、財産分与が単に右潜在的持分を顕在化させ、それを正式に帰属させるだけの手続とはいえないのであって、財産分与によって初めて夫名義の財産に対する妻の所有権又は共有持分が発生するといわざるを得ないから、そこに資産の譲渡と目される実質があることは明らかである。」

と判示した原審の判断を是認しています(最高裁平成7年1月24日判決)。

この財産分与の性質によって区分せずに包括的に課税する最高裁の考え方に対して、学説の多くは反対しています。

離婚による精神的ダメージや離婚手続の負担でヘトヘトな状態の当事者に、さらに譲渡所得税が課されるとは、理屈は分かりますが非情な制度だと思います。

なお、居住用不動産の財産分与の場合には、一定の要件のもとに優遇処置が認められる場合があります。