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取締役の損害賠償責任   

会社設立時等に家族や知人から取締役就任を依頼され、軽い気持ちで取締役になると、何か問題が起きた時に責任追及される恐れがあります。

「名前だけ貸しただけ(名目取締役)」と言い訳ができそうですが、そのような言い訳は原則として通りません(第三者に対する責任について、最高裁昭和55年3月18日判決)。

取締役に就任する場合には、以下に述べる責任リスクを負う可能性があることを十分に認識して承諾してください。

取締役の責任は多岐に及びますが、損害賠償責任に絞って説明します。


1 会社に対する任務懈怠責任(会社法423条)

会社と取締役とは委任関係にあるので、取締役は会社に対して善良なる管理者としての注意義務(善管注意義務)を負い(会社法330条、民法644条)、さらに取締役は会社に対する忠実義務を負っています(会社法355条)。

これらの義務に違反し、任務を怠ると「任務懈怠」になります。

取締役の故意または過失による任務懈怠によって会社に損害が生じた場合に、取締役は会社に対して損害賠償責任を負います(過失責任)。

ただし会社との間で利益相反行為をした場合など(会社法428条)は過失が無くても責任を負います(無過失責任)。

具体的には、法令や定款に違反する行為をした取締役はもちろんのこと、取締役会で決議に賛成した取締役も責任を負う場合があります。

この会社に対する取締役の任務懈怠責任は、取締役が任務懈怠行為について善意かつ無重過失の場合に限り、株主総会の決議等で損害賠償責任の一部免除を認めることができます(会社法425~427条)。

会社に損害が生じた場合の責任追及の主体は会社が行うのが原則ですが、任務懈怠責任を負う取締役との馴れ合いにより会社に損害が生じていても責任追及をしない場合があります。

そのような場合には、株主による株主代表訴訟を提起されて責任追及されることもあります(会社法847条)。

2 第三者に対する損害賠償責任(会社法429条)

取締役が悪意または重過失による違法な職務執行を行った結果、会社以外の第三者に損害が生じた場合には、当該職務執行を行った取締役は第三者に対して損害賠償責任を負います。

例えば、会社の破産申立てをすることが予定されている場合に、支払が不可能であることを認識しながら仕入先に手形を振出した代表取締役に対して、手形が不渡りになり損害を被った債権者から当該代表取締役個人に対して責任追及がされるような場合です。


3 経営判断の原則

以上の会社及び第三者に対する損害賠償責任は、経営判断の原則により免責されることもあります。

事後的に結果を見て経営判断が正しかったか否かを検討して善管注意義務違反(任務懈怠)があったと評価されてしまうと、経営者としては投機的取引や冒険的取引を行うに際して萎縮してしまい、会社の発展が阻害されてしまうのでないかという問題意識です。

そこで、当該経営判断が善管注意義務違反(忠実義務違反)であるか否かの判断は、

「取締役によって当該行為がなされた当時における会社の状況及び会社を取り巻く社会、経済、文化等の情勢の下において、当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験を基準として、前提としての事実の認識に不注意な誤りがなかったか否か及びその事実に基づく行為の選択決定に不合意がなかったか否かという観点から、当該行為をすることが著しく不合理と評価されるか否かによるべきである。」(東京地裁平成16年9月28日判決)

などの基準(経営判断の原則)により判断すべきと考えられています。