特定支出控除の改正
平成25年1月1日以降の給与所得の特定支出控除の内容が変わりました。
特定支出控除とは、実額経費が給与所得者の概算経費である給与所得控除額を超える場合には、その超える部分の金額を給与所得から控除することができるという制度です(改正前、旧所得税法57条の2)。
この特定支出控除の適用を受けるためには実額経費の証明書や領収書等を確定申告時に添付しなければならないことから手続きが煩雑であり、また実額経費が給与所得控除額を超えることもまれなことから、これまでほとんど利用者がいない状況でした(全国で毎年数名程度)。
そこで今回、制度を利用しやすくするために実額経費の範囲の拡大と特定支出控除の適用要件を緩和する改正がなされました。
1 実額経費の範囲の拡大
これまで実額経費として認められる支出は、
(1)通勤のための支出
(2)転勤に伴う転居のための支出
(3)職務上直接必要な研修のための支出
(4)職務遂行に直接必要な資格取得のための支出(弁護士や税理士等の専門資格は除く)
(5)単身赴任者の勤務地と自宅との間の旅費のための支出
に限定されていました。
今回の改正では
(6)職務遂行に直接必要な弁護士や税理士等の専門資格を取得するための支出
(7)職務に関連する書籍及び勤務場所において着用が必要な衣服を購入するための支出
(8)職務上関係のある者に対する一定の交際費等の支出
が追加されました。
上記のうち、注目すべきは、(7)と(8)のような勤務必要経費が認められることになったことです。
特に勤務場所において着用が必要な衣服として背広も特定支出控除の対象となる支出に含まれたことは多くの給与所得者にとって重要な改正だと思います(勤務先から背広着用が求められている場合に限ります)。
2 適用要件の緩和
これまでは、実額経費の合計額が給与所得控除額を超える場合にのみ特定支出控除の制度が適用されました。
今回の改正では、特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を超える場合にその超える部分の金額の特定支出を控除することが可能になりました。
例えば年収300万円(特定支出90万円)の会社員の場合
給与所得控除額は速算表から108万円と算定されます。
特定支出の額がその半額である54万円を超えれば特定支出控除の適用を受けることができます。
特定支出控除の額は90万円-54万円の36万円になります。
そして最終的に給与収入300万円から控除される額は給与所得控除額108万円と特定支出控除額36万円の合計144万円であり、結果、控除後の給与所得金額は156万円になります。
以上のように、特定支出の範囲拡大と適用要件の緩和はされましたが、確定申告書への領収書等の添付と支出ごとに給与支払者その他の証明書が必要なことは変わりません。
本改正により適用を受ける給与所得者が増えるか否か、非常に興味があるところです。