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租税不利益不遡及の原則の意義   

労働法では「不利益不遡及の原則」は明確
平成14年に、人事院が公務員の給与減額を勧告した時、公務員から猛反発があり国会で延々と議論されましたが、その中では「不利益不遡及の原則というのは、法律を一通り勉強した人間には非常に大切な法原則」などという答弁がなされています。
与野党政府閣僚一致した合意原則でした。

税には「不利益不遡及の原則」はなかった
平成16年の土地建物の譲渡所得と他の所得との損益通算を廃止する税制改正は、年初への遡及適用でしたので、民主党から内閣に対し「不利益不遡及の原則に違背しないか」との質問主意書が提出されました。
これに対する小泉純一郎名義の答弁書には「過去においても、一定の資産の譲渡損失等について、その年の4月1日施行の法律改正によってその年分以後の所得税について損益通算を認めないこととした例がある。・・・御指摘の不利益不遡及の原則や法の安定的運用との関係については、問題はないと考える。」と書かれていました。

少しだけ例示してみます。
● 青色申告者にとっての純損失の概念から居住用財産の譲渡損失の一定のものを排除する平成10年改正も年初への遡及適用でした。
●専従者の場合、たとえ給与がわずかだったとしても扶養親族や控除配偶者になれないとの昭和62 年の改正も年初への遡及適用でした。

学者も「不利益遡及」を認めていた
最も権威のある「租税法」という本でも、「年度開始前に改正が十分予測できたなら遡及立法も許される」と書いています。
しかしこれは、法律を作るのは自民党でも官僚でもなく、国会なのだという原則を踏み外している意見です。

判決では「租税不遡及の原則」
後からの改正で土地の譲渡について遡及課税が許されるかを争った、今年1 月29 日の福岡地裁の画期的判決は「租税法規不遡及の原則に違反し違憲無効」としました。
この裁判は高裁で係争中です。