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この年金はいつの所得?   

所得の帰属年度
所得税法は、一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得額を計算し課税することとしています。
そして、その年分の収入金額とは、その年において収入すべき金額によるものとされています。

なぜ収入すべき金額なのか?
現代のように信用取引や特殊な取引が増えると、現金の収受を基準とすることは実態に合わなくなっています。
そのため、一部の事業者や取引を除き、企業会計の発生主義の考え方にならい、現実の収入がなくてもその収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、客観的に課税所得を計算する(権利確定主義)こととしています。

老齢厚生年金受給権の発生時期
厚生年金保険法の定める年金給付に係る受給権は、同法の定める受給要件を満たした時点で基本権が発生し、その後支給期日が到来することにより、実際に年金を受け取る権利(支分権)が発生します。
受給権者は、裁定の請求をすればいつでも年金の支給を受けることができる状態になりますから、その支給期日が到来した時点で年金の支給を受ける権利が確定したものとされます。
したがって、一時に支給された場合は、それぞれ本来の支給期日の属する年分の収入金額として課税所得を計算することになります。
このように、法令により定められた支給期日をもって年金の収入すべき時期とし、客観的に所得の帰属年度を確定すれば、課税の公平を図ることができます。

遡及して一括支給を受けたら
年金を受給できないと思っていた妻が、受給できることがわかり裁定請求した結果、過去数年分の年金を一括支給された場合、何をする必要があるでしょうか?
①妻の各年分の確定申告
②夫が配偶者控除等の適用を受けており、妻の所得が38万円を超える年が生じた場合、修正申告等が必要になります。 

所得税法
(収入金額)
第36条
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

3 無記名の公社債の利子、無記名株式等の剰余金の配当(第24条第1項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第1項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。

所得税基本通達
(雑所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期)
36-14
雑所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期は、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1)法第35条第3項《雑所得》に規定する公的年金等
イ 公的年金等の支給の基礎となる法令、契約、規程又は規約(以下この(1)において「法令等」という。)により定められた支給日
ロ 法令等の改正、改訂が既往にさかのぼって実施されたため既往の期間に対応して支払われる新旧公的年金等の差額で、その支給日が定められているものについてはその支給日、その日が定められていないものについてはその改正、改訂の効力が生じた日
(注)裁定、改定等の遅延、誤びゅう等により既往にさかのぼって支払われる公的年金等については、法令等により定められた当該公的年金等の計算の対象とされた期間に係る各々の支給日によることに留意する。
(2) (1)以外のもの
  その収入の態様に応じ、他の所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期の取扱いに準じて判定した日


厚生年金保険法
(年金の支給期間及び支払期月)
第36条
年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、権利が消滅した月で終るものとする。
2 年金は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。
3 年金は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれその前月分までを支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであつた年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、支払期日でない月であっても、支払うものとする。