税法は予知能力を要求?
法の不知は許されない
法律は、それを国民は全部知っているということを前提に行政・司法は運営されています。
「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」これは刑法38条です。
税法条文がどんなに難解でも、それを知らないことを理由に申告を漏らしたり、不正確にすることは許されず、情状酌量の扱いも原則的にありません。
税法は予知
憲法は、法律によらなければ課税できないとしています。この条文を逆読みして法律に書きさえすれば遡った時期への課税も許されると解釈をする人がいます。
誰がそういう解釈をするかというと、財務省・国税庁の役人・裁判官・税法学者達です。
税法については、国民はそれを熟知しているだけでなく後から作られる法律まで熟知していないといけないのです。
遡及立法違憲判決合憲判決
4月1日施行の改正税法を1月1日まで遡及適用させるとの規定につき、これを憲法違反とする判決が1件、逆に合憲とする判決が2件あり、どれも高裁で現在係争中です。
近い将来存在することになるかもしれない法律の内容を、条文がまだ作成される以前に熟知し、それに基づいて経済行動することが必要という過酷な要求を満たすのに現実の情報の伝達の程度と余裕期間が2週間ということで十分であったか否かで、片や違憲とし、片や合憲としました。
憲法は予知ではなく予測の確保を要求
法律によらなければ課税できないとの憲法原則は、自分の税金がいくらになるのか予測しながら経済選択行動することを保障するためのものであり、予測計算判断を十分にできるようにするための期間こそ確保すべきことを要求するものです。
翌年施行などのように、公布した法律の施行そして熟知までの期間の十分な確保への要求なのです。
即ち、予測可能性の確保です。
それを立法の予知可能性の確保の十分不十分の議論にしてしまっているのが、現在の憲法解釈論争です。