誰が納税義務者になるのか
一般的に、会社が破産(個人破産も同じ)した場合、裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人は公正な債務弁済のため、破産会社の資産を管理処分して、これを債権者に分配します。
処分資産の中には、商品在庫・建物・什器備品等の課税資産の譲渡も含まれていますので、その消費税の納税が問題になります。
そこで会社が破産した場合、一体誰が納税義務者となり誰が履行するのか、破産法人なのか、それとも破産管財人なのか、消費税法では規定されていません。
破産法人は実体として機能していないので、破産法人に納税義務があるとしても一体誰が納税義務の履行をするのか不明です。
一方、破産管財人は、破産者の財産を管理処分して、これを債権者に分配することを目的として存在するので、納税義務者になりうるかどうか疑問です。
(1)消費税の実務上の取扱い
実務解説書は、次のように述べています。
①破産財団(破産法人の総財産)の管理及び処分をなす権利は破産管財人に専属することになりますが、②破産手続中であっても破産法人は存続し、破産財団は破産法人に帰属します。したがって、③破産手続中に破産管財人が行なった課税資産の譲渡に係る納税義務者は破産法人となります(よって、破産法人の基準期間における課税売上高により納税義務の判定を行なうことになります)。なお、納税義務の履行手続きは破産管財人が行なうことになります。
(2)破産管財人が納税義務を負う根拠
この実務上の取扱に異論を唱えて、提訴した破産管財人がいます。
その主張は、
①破産財団と破産法人とは別の法的主体、結果、②基準期間における課税売上を引継がない、③破産財団は新設法人であり基準期間がないから「納税義務を負わない」
でした。
一審の福井地裁で勝訴しましたが、控訴審で国側勝訴の逆転判決となりました。
勝訴理由は、法人税が解散した場合の清算所得に対する規定は、破産清算を適用除外としていないこと。
また、清算中の所得にかかる予納法人税の予納申告・納付義務規定は、破産管財人に及ぶとする最高裁平成4年判決などが根拠のようです。
なお、破産管財人は、判決内容を不服として上告した模様です。
1.破産財団に帰属する課税資産の処分に係る納税義務者
「問」
当社は、破産宣告を受けましたが、破産財団に帰属する課税資産を破産管財人が処分した場合、その課税資産の譲渡に係る納税義務者は、破産法人である当社となるのですか。
「答え」
破産財団(破産法人の総財産)の管理及び処分をなす権利は破産管財人に専属することとなりますが、破産手続中であっても破産法人は存続し、破産財団は破産法人に帰属します。
したがって、破産手続中に破産管財人がその地位に基づいて行なった課税資産の譲渡に係る納税義務者は破産法人になります(よって破産法人の基準期間における課税売上高により納税義務の判定を行なうことになります。)。
なお、納税義務の履行手続は破産管財人が行なうことになります。
回答事例
消費税質疑応答集 平成14年版
斉藤文雄編 大蔵財務協会
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2.福井地裁 2007年09.12
◆ 福井地裁
破産財団の消費税課税取消し
福井地裁でこのほど、破産財団の消費税の取扱いについて画期的な判決が出た。
破産宣告後に店舗などを売却し、その売却収入についての5%の納税を税務署から決定されたことについて争ったものであった。破産財団は、「破産宣告後に生じた新規の法人で人格のない社団に該当し、債務超過のため資本金が1,000万円以上の会社と同様の扱いは相当ではない」という理由で、新規設立スタート2年の免税規定が適用される、との内容であった。
3.名古屋高裁金沢支部
◆名古屋高裁
◇財産売却への消費税めぐり
倒産した紳士服会社の破産財団の財産売却に、福井税務署が消費税を課したのを不服として、同社の破産管財人が国などに納税決定処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が16日、名古屋高裁金沢支部であった。渡辺修明裁判長は原告の主張を認めた昨年9月の1審・福井地裁判決を取り消し、原告の請求を棄却した。
この紳士服会社の倒産時の財産(破産財団)が、納税義務のない「人格のない財団」として、同社とは別の事業者に当たるかどうかが争われた。
◆愛知ニュースより引用