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ホステス報酬と判決   

源泉徴収の対象
 源泉徴収という言葉から連想するのは給料でしょうか?
 給料以外にも、税理士の報酬、医者の社保診療報酬、外交員の報酬、バーのホステス報酬、その他の支払いで源泉徴収はされます。

源泉徴収税額の計算
 源泉徴収税額の計算方法は、税理士報酬等のように二段階税率を適用するもの、社保報酬や司法書士報酬等のように1回に支払われる金額から一定の金額を控除するものなど、いくつかのパターンがあります。
 ホステス報酬については、1回に支払われる報酬額から、1日当たり5,000円を控除した額の10%とされています。

1日当たりの意味
 法律の正式な文言は1日当たりではなく「計算期間の日数」となっています。
毎週払いだとして、出勤した5日分として10万円の報酬を支払うとしたら、
(10万円-5,000円×日数)×10%
の計算式で徴収する源泉税を計算します。
 ここで日数は、5日と7日、どちらでしょうか。

裁判になった
これについて税務署の7日とする見解に承服しかねるとして裁判で争った事例があります。
平成18年11月に地裁判決があり、平成19年6月に高裁判決があり、両方とも納税者が勝訴して、判決は確定しました。
以下、税務署主張と裁判所判断です。

税務署の主張
 5,000円控除の趣旨は、所得税額の還付手続の手間を防ぐこと、確定申告時に納付する税額と源泉税額とを近似させ不申告による徴収漏れ等を防止することにあるから、その趣旨に照らして解釈すると、ホステスの「支払金額の計算期間の日数」は、ホステスの実際出勤日数をいうものである。

裁判所の判断
 5,000円控除には必要経費が考慮されていることは否定できないとしても、5,000円の額は物価変動のあるこの30年間変更されておらず、必要経費との間に相関関係があるとまでは認められない。条文の「計算期間の日数」を「稼働日数」とムリに読み直さなければならない必要もない。

所得税法 第204条 源泉徴収義務
居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
六 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という)のその業務に関する報酬又は料金

施行令 第205条 徴収税額
前条第1項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。
二 前条第1項第2号に掲げる司法書士、土地家屋調査士若しくは海事代理士の業務に関する報酬若しくは料金、同項第3号に掲げる診療報酬、同項第4号に掲げる職業拳闘家、外交員、集金人若しくは電力量計の検針人の業務に関する報酬若しくは料金、同項第6号に掲げる報酬若しくは料金又は同項第8号に掲げる賞金 その金額(当該賞金が金銭以外のもので支払われる場合には、その支払の時における価額として政令で定めるところにより計算した金額)から政令で定める金額を控除した残額に100分の10の税率を乗じて計算した金額 5,000円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額(当該報酬又は料金の支払者が当該報酬又は料金の支払を受ける者に対し法第28条

第1項に規定する給与等の支払をする場合には、当該金額から当該期間に係る当該給与等の額を控除した金額)
東京地方裁判所平成17年(行ウ)第7号所得税納税告知処分取消等請求事件(一部取消し)(控訴)
【ホステス報酬の源泉徴収義務/所令322条「計算期間の日数」の意義】

東京高等裁判所平成18年(行コ)第331号所得税納税告知処分取消等請求控訴事件(控訴人立川税務署長)(棄却)
【裁判所ホームページ行政事件裁判例集】
【ホステス報酬の源泉徴収義務/所令322条「計算期間の日数」】

判決年月日 H18-11-21(H19-06-12)
国税庁訴資 Z888-1317(Z888-1327)